・「迷宮ダンス・ツアー」@滋賀会館
・8月7日から10日まで行われていたワークショップ、「建築とコンタクト」で制作された作品群です
・会館のそこここでダンスが行われており、ときどきぱちぱちと拍手が聞こえてくる、そういう状態
・C.土間(洗濯場)
・ガラス越しにダンスを眺めます
・反射がきつく、ガラスに映っている景色と演者さんが入り交じって見える状態でした
・いないと思っていたひとがふうっと現れ、いると見えたひとはただの反射する通行人で
・夕暮れ時という時間のせいか、蛍光灯に照らされた室内がよく映っていました
・そう見えることは狙いではなかったのかもしれませんが、不思議な光景でした
・A.女子トイレ
・ドアをフレームにして、その中でひとが動き回るような構図
・ふっと覗いてみたらなんか中が大変なことになってる!という印象
・お手洗いなのですが、ダンスがそこにあるせいで、汚いとか観るのが躊躇われるとかそういう印象が全くなくなっていました
・最もありふれた場所なだけに、「踊りによる場所の変容」を最も強く感じた場所でした
・踊りが終わってドアが閉まり、ふたたび開くとそこには先ほどまで演者であったひとがごく普通ににこにこと笑って「ありがとうございましたー」と挨拶してくる、という流れになっており、実に面妖な気分でした
・ついさっきまでそのひとは無言で奇妙なかたちで、ドアを隔てた向こうにあったのは紛れもなく異世界だったのですが
・H.大ホール舞台上
・真っ白の服を着て、真っ白の日傘を差し、花束を持った女性がゆるゆると歩いています
・白いメリーさんを連想しました
・演者さんだというのはわかるのですが、なにか目を合わせることが躊躇われ、どう接したものかわからないまま傍らを通り過ぎました
・はじまりもおわりもなく歩き続けている方に唐突に拍手をするわけにも、ずっと観ているわけにもいかず
・あとで聴いたところによると、80分間歩き続けておられたそうです
・終演後、ご本人に上記の「接しづらさ」を感想としてお話ししたところ、「よく話しかけづらいって言われるんです」と、なにやら考え込んでおられました
・ご本人にとっては不本意だったのでしょうか
・あの「接することを躊躇わせる空気」は、あってよいものだったと思っています
・歩いているだけなのに、通行人とは一線を画するなにか
・D.アナウンス席
・狭いところでやっておられたので、観客がひしめき合う形になってしまい、よく見えませんでした
・すこし間を置いて、別の回に見やすい場所で再度観ました
・左右には狭く見えましたが、上方向には空間が伸びており、そこを使って動きに幅を持たせておられました
・最後近くには床を使ってうごうごする動きがあったため、初回はよく見えませんでした
・観客に優しくない配置ではありました
・しかしながら、維新派ワークショップでの稽古の際私もこの場所をよく通り、この場所がとても好きでしたので、ここを選んだお気持ちはお察しします
・狭い場所は素敵です
・B.上手側ロビー(男子トイレ前)
・最もキャラクターと物語がはっきりした踊りでした
・鬱陶しいくらい仲の良いカップルと、女性に想いを寄せてものすごい勢いで苦悩する男性の3人組
・途中から観て、終わったのを観て一旦場を離れようとしたところ、演者のアミジロウさんから
「途中からでしたよね?よろしければすぐにもう一回やりましょうか」
と声を掛けていただき、立て続けに2回目を見せていただきました サービス精神に感激
・アミジロウさんは「旅の道連れ」にも出ておられました
・ぺらっとした、内面のあまりないキャラクター群なのかな、と見えたのですが、動きから立ち現れるものが色々あり、興味深く思いました
・どこまでが意図したもので、どこまでが制作者の意図しない、こちらが勝手に読み取ったものなのでしょう
・身体のみで表現することの、そういう微細な行間を発生させる余地はとても強いものだと思うのです
・ときに誤読を招くとしても
・F.舞台袖2階
・空がきれいでした
・動きながら観てくださいね、と言われたのですが、そうフットワーク軽く観られるものではなく、なんとなく所在なげに目をやる感じに
・アフタートークでも指摘がありましたが、観客に付いて来させるというのは相当な力量を求められる仕事のようです
・以前、栗東の「踊りに行くぜ!」のあと、jouさんが会場外を踊り回り、それを観客がついて回って観ていたのを思い出しました
・音楽があれば、あと大人数なら、状況はまた違ったかもしれません
・引力を発生させる動きというのは難しいものだと思いました
・最後の幕引きは好きでした
・G.舞台下廊下
・こんな場所もあったのですか
・階段を下りてすぐの細い廊下、突き当たりには鏡が張ってあるという不思議な空間
・天井に張り巡らされたパイプまで使って縦横無尽に動き回る演者さん
・なにかSFに描かれる未来のような印象を受けました
・重力がないような
・背の高い方が多かったのでしょうか 妙に縦に長い絵として記憶に残っています
・縦長のドアを枠として鑑賞するかたちでした その枠の影響もあるのかもしれません
・構図の面白さ、動きの面白さを堪能できました
・E.階段室
・階段の下から演者さんたちを見上げる構図
・階段の下から扉を見上げる構図はなんだか好きです
・これも上下への動きです
・3人の演者さんが上から下へと下りてきて、また上に上がって
・3人の間に意味のある関係性はないように見えていたのですが、最後にふたりが上がっていってドアを閉め、ひとりを締め出します
・そこで唐突にそれまで「動く機械」であったひとが内面を持ったようで、どきりとしました
・最後の最後にそのドアを内側から開けて、にっこり笑ったひとの顔が印象に残っています
・あれは物語の外側の笑顔だったのでしょうか、あそこも含めて「演技」だったのでしょうか
・舞台としては曖昧な場所のできごとで、ともすれば境界がよく揺らいで
・ほかの場所にもいえることです
・ガイドさん
・ちいさなガイドさんが館内を巡回しており、その方によく助けていただきました
・身長の半分ほどもあるやや長めの旗を持ち、それを振りながら館内のあちこちにある舞台を案内してくださいました
・小学4年生だそうです
・「滋賀会館クラブ」と書かれた旗でした ここには過去にどんなクラブがあったのでしょう
・ホスピタリティ溢れるガイドぶりで、すっかりファンになってしまいました
・ほぼ完璧な敬語を使われていたのも印象的でした
・アフタートーク
・とても楽しいイベントでした
・それとは関係なく、ここのところは定期的にやってくる「ひきこもりたい時期」に入っており、観ながらちょっとひとがこわいなあ、ひとに触るのはおそろしいことだなあ、それをやっている演者さん方はすごいなあ、という感想も抱いておりました
・なので、終わったら帰ってすぐにひきこもるつもりであったはずなのですが
・アフタートーク後の打ち上げに参加
・ひとみしりなのに、ワークショップに参加していないのに、ほぼ全員初対面なのに
・踊りの力か場の力か、その両方かに引っ張られました
・演者さん方に各種裏話なども聞けて、楽しく刺激的な時間を過ごすことができました
・じゅんじゅんさんがいくつかのチームと感想を交換しているのを伺えたり
・以前から大ファンの坂本公成さん、森裕子さんと同席できる機会が嬉しすぎてあわあわしたり
・滋賀会館の白崎さんも途中からいらっしゃいました
・数年前に白崎さんが来てから、滋賀会館はとても面白い場所になりました
・このさきひとが入れ替わって、大ホールの使用が停止になって、滋賀会館は変わってしまうのでしょうか
・何度も書きます、私はこの場所がほんとうに好きです
・終電ぎりぎりまで、日本各地から来られていたワークショップ参加者さんたちが名残を惜しんでおられました
・アフタートークで「場所との縁は仕方なくても、ひととの縁があれば、面白いことがまたできますよ」というおはなしがあったのを思い出しました
・とても楽しいイベントでした
・またこういう場に出会えればと思います