特に疑問もなく漠然と、私はもう自分の中に他人を立ち入らせることなくこの先の人生を送っていくのだろうな、と認識していました。
ですが
「中年を過ぎて独り身で暮らすというのはね、指を痛める怪我をしたときに不便を助けてくれるひとがおらず、治るまでギプスを着けようにも自力では着脱がままならず、どうせ心配してくれるひともいないし今後の人生もそう残っていないということを思うともうなんだかどうでもよくなってしまって、病院にも行かずに数ヶ月痛む指を放置してしまう、そういう生活を選ぶということなのですよ」
と、なんともいえない色の目で微笑みながら変形して動かなくなった指を示して語られると、さすがにすこし人生設計を考え直したくならざるをえません。