・ 連続オープンセミナー「ラグジュアリーの本質」 第三回講演会 都築響一「贅沢は敵か?」
・写真の上映用にMacBook Airが使われているのを見ました
・現物を見たのははじめてです きれいな機械ですね
・「他人から見てどうであっても、本人にとってはとても贅沢なものに囲まれた状態があり、それを大事に貫いている方々、というのがいます」
・「その趣味の多くは理解されず、家族からは迷惑がられている、そういう『気違いのじいさん』を探し歩いては記事にするという連載を雑誌『サイゾー』でやっていました」
・今回はそういう「贅沢な」方々のおはなし
・この日はほんとうにいいお天気で、外は桜が満開で、そんな中薄暗い美術館講堂の中で常軌を逸した方々の作品、コレクションを鑑賞することに
・「こんないい日にこんなところに来てくださる方々ということで、なんというかね、絶対おまえら友達いないだろ」
・もちろんですとも
・天才蝋人形作家、松崎覚さんのおはなし
・高い技術をお持ちなのですが、このご時世には蝋人形の作成依頼がなかなか来ないのだそうです
・あるご老人の依頼で、「性的なことを知らないまま戦死していった同期の霊を弔うために」男女の生殖器をたくさんと、あられもない姿の女性1体の蝋人形を作って納品することになりました
・写真を見ると、どれもたいへんなまなましい出来
・そのご老人はご家族に内緒でそれらを蔵に保管、ご老人が亡くなってはじめてそれらがご家族の目に触れ、大騒ぎに
・返品され、作者さんも持て余し、買い取ってくれと頼まれ、今は都築響一さんが所持しているとのこと
・「どの美術館でも展示させてくれません」
・その作家さんは貧しく、手先が器用なのでウクレレの先生などもやっています
・あるとき、蝋人形でジオラマを作り、それをデパートなどで巡回させてお金を得ようと考えました 長い期間をかけて凝ったものを制作
・作ったジオラマが「凄惨な児童虐待の現場」とかそういう目を背けたくなるようなのばかり
・なまじ技術がすごいだけにひどいものになっていました
・お金にはならなかったそうです
・安田老人のおはなし
・90代のアダルトビデオ男優さん(現在体調不良で休職中、ですが復帰予定のリハビリ中なので現役) その筋では有名人なのだとか
・手元に控えながら聞いていたら「こんなことメモ取らなくていいですよ」と言われました
・確かに
・すごい写真がいろいろありました 年齢のせいなのか、いやらしさとはちょっと違う迫力が発生していたような
・年齢に関わらず情熱を持ち続けるちからに圧倒されました
・だけれどそれが性的なものだとどうも素直に尊敬しにくいのが難しいところです
・北村公さんのおはなし
・アマチュア写真家
・裸の女性が頭にビニール袋をかぶって仁王立ちしている写真
・「モデルさんは顔を隠した方が安心だろうから、袋をかぶせました」
・袋が気になって、いやらしく感じる余地がありません
・アートのようにも見えますが、この袋には実用性以上の意図がありません
・撮り手のまなざし、被写体との関係性が全く浮かび上がってきません
・ある意味ストイック
・裸の女性がシャワーキャップをかぶってビリヤード台の上に枕を乗せ、そこにもたれかかっている写真
・「シャワーキャップは顔を隠すため、枕は机が冷たくておなかが冷えるのを防ぐために置きました」
・こうしたほうがよい写真が撮れますよ、という指摘をされると怒るのだそうです
・「評価される必要はない、金ならある、作品を売るために撮っているわけではない、自己満足が全てだ、駄作の海に埋もれる」
・アマチュアだからこそ撮れる「贅沢な」写真、こういうものを撮ることは難しい
・誰にも認められないものを純粋な自己満足のために作り続けることができるでしょうか
・これは「表現」なのでしょうか
・Miroslav Tichyさんのおはなし
・チェコで美大からドロップアウト、小屋にひきこもってしまった方
・女性の姿を撮りたいがためにカメラを自作 糸巻きを流用してフィルムの巻き取り機を作ったり、老眼鏡をレンズにしたり
・盗撮です
・自作フィルムケースにも女性裸体の落書きがあり、なんだかわからない情熱を感じました
・作品が「発見」されて以降、評価を受けているとのことです
・全員にいえることですが、この方も「すごいけれど近くにいたら困るし怖い」
・もう写真は撮っておられないそうです よかったのか惜しいのか
・その他芸術家?6名 売れない演歌歌手4名 ドリャーのおじさん1名を紹介 全員とても濃く、面白いお話でした
・「全員ガケから飛んでいるひとたちです 危険で、嘲笑されることはあっても尊敬はされません それでも本人はとても楽しんでいます」
・「これはこれで最終的には人生勝ち組です」
・「周囲の忠告に耳を貸さないのは大事です わからないことを謙虚に周囲から学ぶのは20歳まででいいと思うんです それ以降はひとの言うことを聞かない、というのが楽しく生きるための技術です」
・「もちろんそれを通せば友達をなくしますし嫌がられますしお金も入りません」
・「ですが、1度しかない人生をとんでもないことにかけてしまう、というのは究極の贅沢です」
・「人生がつらいときにそういうひとのことを思い出せれば、いい感じに人生を踏み外すことができるのではないでしょうか」
・今のお仕事に飽きたとか、どこか遠くに行きたいとか、そういう風に思うことはあります
・とりわけこの時期は忙しく、ちょっと違う場所に行きたいと思うことが増えていました
・だけれど、今の私にガケから飛ぶ勇気はないと知りました
・どうしようもなく外側にいるひとたちを見たとき、自分の立ち位置を強制的に確認することになります
・世界と折り合って生きていきますか?自分の信じるものに全てを費やしますか?
・そこまで夢中になれるものが、その情熱がありますか?
・最近流行の「アウトサイダーアート」のことを考えました
・私はこのくくりに抵抗があります 創作をせずにはいられない方は多かれ少なかれどこかが欠けている、外側にいるひとのように思います
・「なにかを創作する人の頭の中は全く閉じられている。ひとつの世界観があって、全部をその窓から見てしまう。多分神様はその集中力とひきかえに、その窓から見た景色をそれぞれの形に描くことを許すのだろうと思うのだけれど」
・だけれど、誰にもわかってもらおうとしない、なにひとつ伝えようとしていない、それでもアートとしか呼べないような、自然の造形物のようななにかがあります
・これは表現なのでしょうか、芸術なのでしょうか