旅行に行ったら、なるたけひとにその話をしたほうがよいそうです。
話すことによって体験がほんとうに自分のものになるのだとか。
話してもいないし書いてもいないおはなしがたくさんあります。
いずれは忘れてしまうのでしょう。
私はもっと多くのことをあなたにおはなししておくべきなのでしょう。
ですが時間は限られていて、話せることも聞けることも限られています。
私はどれだけのことをあなたに伝えられるのでしょう。
どれだけのことを失わずに留めておけるのでしょう。
ただここにいるだけでぽろぽろとこぼれて失われてしまうものの存在が、ときどきつらくなるのです。