培養される「指」=再生医療技術がアートに−東大この技術が一般化したら、遊女の「指切り」が、カジュアルな愛情表現として復活したりするでしょうか。
ガラスの手に載せられたフラスコの中で培養される「指」−。東京大生産技術研究所の竹内昌治准教授らがマウスの細胞を使って再現した女児の「人さし指」が、造形作家の鶴巻風(ふう)さんとの共同作業で芸術作品となり、東京・南青山のスパイラルホールで2日展示された。
この「指」は、長さ3.5センチ、直径が最大9ミリ程度。コラーゲンの微小なビーズの表面にマウスの皮膚細胞を付着させたものを大量に人さし指の型に入れ、約24時間かけて培養し、生み出した。細胞の固まりで内部に神経や血管はない。
竹内准教授によると、この技術は本来、再生医療への応用が目的。多様な細胞に変わるヒトの万能細胞を使い、肝臓や膵臓(すいぞう)の立体的な組織を作ろうとする際、細胞が高密度に詰まった大きな組織を速く作る技術が役に立つという。(2010/05/02-18:22)
切らずに培養で済ませる、お手軽な贈り物、という感じで。
とはいえ、もし私が自分の指をうっかり修復不可能なかたちで落としてしまったとしたら、あるいは自分の指を培養することができるとしたら、それをひとにあげるのには、何らためらいも感慨もない気がします。
それはもう「私」ではない、ただの「もの」だと感じられます。
当人にとって、自己の一部とは認識できない物体。
一方で、好きな方の指を培養して、宝物のように手元に持っていたい、という恋心のかたちは、ありうるような気もします。
それがただの「もの」に過ぎなくても、その中に「あなた」の存在を感じることはできる気がするのです。
他者にとって、その人の一部と認識できる物体。
ものとひとの境界は、どこにあるのでしょうか。
どこまでが「あなた」なのでしょうか。