今日の昼間、職場の建物外でとかげを見つけました。
遊んでみたく思い、ぱっと尻尾を押さえてみたら、ぱたぱたっと自切した尻尾だけを残して逃亡されました。
悪いことをしてしまった、と思いながらも残された尻尾がぴょんぴょんと跳ね回る様子が可笑しくて、摘んでみたりくすぐってみたりとひとしきり指でじゃれてみます。
とはいえこれを職場に持って帰るわけにはいきません。
かといって自分のせいで切られてしまった尻尾を放って帰るのも、なんとなく気が引けます。
どうしたものでしょう。
考えていると、草陰から別のとかげが現れ、跳ね回る尻尾をさっと口に咥えました。
そのまま臆することなくきれいな目でこちらを見上げ、ゆっくりと尻尾を咥えて草陰に去っていきます。
私にはただ、その背中を見送る以外なく。
あのとかげはあのあと、尻尾をどうしたのでしょう。
食べたのでしょうか、本来の尻尾の持ち主に返したのでしょうか。
あのとかげにとって、同族の尻尾はどういう意味を持つ物体だったのでしょうか。
跳ね回る尻尾を咥えた口、こちらを見上げた目、悠然と去っていった後ろ姿。
あれはひとつの物語であったと思うのです。
得難い情景に出会えたと思うのです。
思うのですが、以前のようなことがありましたので、職場の誰にもお話しできませんでした。