今更、他の誰かなど認めるわけにはいかなかった。閉じた世界は閉ざされたままで終えるべきだった。なにかひとつ大事なものを持ち、それを自分の軸に据えるありかたについて。
(引用元:『MAMA』紅玉いづき)
・その「大事なもの」が生きたひとであった場合
・高い確率での破綻が予測される負け戦です
・だからこそ美しい、という考え方は否定しません
・ひとを大事に思うのは素晴らしいことですが、それを己の全てとするのは危険なことです
・ひとを信頼することは誤りではありません
・ひとに依存することが毒になります
・その「大事なもの」が「信念」や「正義」など、かたちのない概念である場合
・信念に殉ずる生き方はまっすぐでシンプルで、美しいと思います
・そういうものに憧れます
・ですが、それは頓悟の後に全てを得たものと早合点し、思考を止めてしまうのと同じありかたなのではないでしょうか
・ありがちな思考停止の一例です、南宗禅(頓悟禅)を否定するものではありません
・単純で美しいものを盲信することの危険性を歴史から学ぶべきではないでしょうか
・オッカムの剃刀は有効な指針ですが、過信してよい前提でもありません
・考え続けること、疑い続けること、揺らぎ続けること
・それは楽しくなく、常に不安が伴い、美しくもないことです
・盲信できるものが欲しいと思います
・たったひとつの大事なものをみつけて、そのために、それだけのために生きてみたいと思います
・それはきっとやりがいに溢れ、迷いのない、美しいありかたです
・だけれどひとつを選んで他の全てを切り捨てるのは誠実なありかたでしょうか
・たったひとつの大切なものを持つことに憧れて、信じるに足るものに焦がれて、そうしながら何も選ばずに何も信じずに己を含む全てを疑い常に最適の解を探すことを怠らずに、身に触れる全てのものに正当な愛情を注げるように生きていきます
・世界の全てに触れることはできません
・ひとつを選ぶことも、全てを知ることもできないというのは、なんとも中途半端で美しくないあり方です
・その上不安に満ちていて、この状態を通すにはある程度の強靭さが必要で、きっとこれは楽しいありかたではなくて
・だけれど今の私にはこうするよりありません
・迷い続けること以上に正しいあり方があると思えません
・正しくあろうとすることは、なんと味気ないのでしょう