ここのところ体調が優れないと思っていたのです。
寝覚めが悪く身体がだるく、出勤がつらく感じられました。
どうも集中ができず、仕事の効率が落ちていました。
風邪気味なのか、季節の変わり目にありがちな気鬱か、そんな状態なのだろうと考えていました。
他部課の親しいひとと話をしました。
「それにしてもそちらの課、ひどい状態ですね」
と言われて、首を傾げました。
なにかひどいことがあったでしょうか。
私と同じ課の方々は皆よい方で、互いに仲が良くて、お仕事に熱心で、最近は特に忙しく頑張っておられて。
それでも処理速度が業務の量に追いつかず、皆さんは少々余裕を欠いておられて。
過酷な状況を乗り切るために、過剰にはしゃいで課員同士でべたべたと群れるように仲良くして、特定の方を疎外してこっそりと陰口を言って笑って、そういうことで親しさを確認するようになっていて。
そういうありかたには馴染めず、私はあの方たちから距離を置くようになっていて。
ああ、ここはもう、随分前からひどい状態でした。
それに気付いていませんでした。
皆さん、ひとりひとりはほんとうに善良な方なのです。
それでも余裕のない環境に置かれて、皆さんすこし疲れてしまわれて、それを乗り切ろうとするうちにいささか悪ふざけが過ぎてしまって、多分それがおかしな状態であることに誰も気付いていなくて。
疎外されている方は群れている方々と別の業務、別の人間関係を持っていて、更に元々期間限定の業務でこちらに来ておられた方なのでもうじき退職することが決まっていて、ここでどう思われたところで特に困らない、というように振舞っておられて。
多分私が何もしなくとも、あと少しすれば何事もなくここを去っていかれるのでしょう。
いいえ、何もしないほうが、ことを荒立てないまま穏やかにあの方を見送れるのでしょう。
だけれど。
気付かなかったのは、気付きたくなかったからです。
見えなかったのは、見たくなかったからです。
善良な方が常に正しい行いをするとは限らないし、誰に悪意がなくともひどいことは起きるものだと知っていました。
知っていても、受け容れがたいことでした。
誰が悪いとも思いたくありません、きっと誰も悪くはないのです。
私は誰のことも嫌いではありません。
それでも。
はじめて、ここにいるのがつらくなっていることに気付きました。