古傷が腐りました。
身体ではなく精神の損傷です。
既に何度か同じようなことがありました。
そのたびに時間を殺し続けて腐った部分を削ぎ落として、何もかもがどうでもよくなる瞬間を経て、全部忘れてしまうことで対処してきました。
あとには何も残りませんでした。
傷跡さえも残りませんでした。
今度もそうなるのかもしれないと思います。
欲しいものがありませんでした。
やりたいことがありませんでした。
何も持っていませんでした。
全部忘れてしまえました。
何があっても笑っていられました。
今度こそはそうしてはいけないのだと思います。
私は傷つかねばなりません。
覚えなければなりません。
傷つかずに変わらずにあり続けることをやめなければいけません。
空洞以外のものにならねばなりません。
きちんと生きなければなりません。
そうはいってもそれはあまり簡単なことではなく、今はぼろぼろと腐り落ちるなにかを掬いながら死なずにいることだけで精一杯なのです。