憑き物が落ちかけています。
もうすこし、あとすこしでしばらく患っていた気鬱は晴れるだろうという予感があって、だけれどそれを手放しで喜べません。
私を囲む状況は、昨日と今日と明日で大きく変わりはしないのです。
なのに私にとっての世界の色は、全く違ったものになってしまうのです。
脳内物質の具合が変わる、ただそれだけのことで。
私は巧く世界と繋がっていません。
世界がどうあれ、他者がどうあれ、構わず幸福になれるし絶望できてしまいます。
私はひとつの揺らぎに過ぎぬ存在です。
無条件の幸福と絶望の間でぐらぐらと揺れ続けるだけのものです。
色々なことを忘れてきました、きっとこれからも悲しいことは全部忘れて亡くしてしまいます。
過去と繋がることができません。
私を繋いでくれるものがどこにもありません。
確かなものが欲しいと思いました。
何かを築いたり、他者と関係性を持ったりすることでそれができるかと思いました。
世界に、自分の外側にあるものに、どうにか関わりたいと思いました。
だけれど上手にできませんでした。
私がいなくなっても世界は何も変わりません、大きな喪失を感じるひとがいるわけでもありません。
どうしてもどうやっても私は断絶された場所にいて、それを変えることが出来ません。
変わりたいと思いました。
やりたいことがあって、それに向けて動くことができて、好きなものがあって好きなひとがいて、それらを大事にすることができる、そういうすこやかなありかたができるようになりたいと思いました。
変われないと思いました。
きっとまた全部忘れてしまいます。
執着するものをなくして、なにもかもがどうでもよくなって、ここにあるということだけで満ち足りてしまって、絶望的に幸福な日々を過ごせるようになってしまいます。
何からも必要とされずに、何も必要とせずに、閉じた場所でにこにこと。
これまでずっとそうであったように。
今までずっとそうしてきたように。
死なないために。
よい傾向ではありません。
このまま同じ事を繰り返してはいけないのです、変わらずにあることをやめなければならないのです、閉じ続けるのはいい加減に終わりにしたいのです。
だけれど変わるために何をすればよいのかわかりません。
気鬱をこのまま患い続けて何かが変わるわけでもありません。
ただ延々と苦しい気分に苛まれて自分で自分を傷つけ続けることに意味があるのかどうかわかりません。
忘れる以外の方法を知りません。
ああ、きっと私は幸せになってしまいます。
誰もそれで困りはしません。
何も変わりはしません。