夜の中を遠くまで走らねばならないと思ったのですが行くべき場所がありません。
あなたならこういう夜にはきっと走るのでしょう。
自分を受け容れてくれる場所がなくとも、誰にも望まれていなくとも、構わずここを離れられるのでしょう。
そうしない私のことを不思議な目で見てすぐやめて、振り向かずにさっさと行きたい場所に行かれるのでしょう。
私にはそれができません。
部屋から出て途方に暮れて空を眺めてすこし身体を冷やしてすぐにここに戻って膝を抱えてしまうことを予測して、何もせずにただここにいることを選択してしまいます。
星も月も見ないで、気持ちばかりがぐるぐると動くのをただ持て余して。
この部屋は居心地が良くてひどく息苦しく感じられます。