真面目な女の子だったひとにはありがちなことですが、長いこと、外見を気にするのは不真面目なことだと思っていました。
学校でも、メディアでも、学生がお化粧をすること、アクセサリーをつけること、ダイエットを試みること、全て「悪いこと」として語られていました。
ですので素直に校則を遵守し、膝丈のスカートをきっちりと着た、野暮ったい学生でいました。
特にそうしない理由はありませんでしたし、規則に従うのは楽しいことでしたし、大人に好まれない子供よりは、好まれる子供でありたいと思っていました。
もとより、自分の外見はひとに好まれるものではないとも思っていました。
まして恋愛なんて、とんでもない、遠ざけるべきことでした。
ひとに好かれようとするのは、あさましいことのように思っていました。
好いてくださる方があっても、どうしていいのかわかりませんでした。
愛されたい、という渇望はたしかにあったのですが。
最近になって、外見を褒めていただくことも出てきて、伴侶をみつけるよう薦めていただくこともあって。
きれいになってみようと、身体を磨いてみるようになりました。
十分ではありませんが、ひとと接することを忌避しないよう、心がけるようになりました。
それはこれまでの意識とは、まったく逆の方向で。
かつて向かっていた、自分の中に閉じた世界を作ってみよう、という試みは、それなりに楽しいものでした。
今志向している、ひとの目を意識して、他者に対して開いた部分を作ってみよう、ということもまた、やってみるとそれなりに楽しく感じられています。
まったく逆の方向に動いてみるのは、実に贅沢な楽しみです。