一ヶ月ほど前のことです。
職場で懇親会をやるにあたり、皆さんの出欠を集約することになりました。
名簿を作成し、それを回覧して各自で出欠を書き込んでいただくことにしました。
少しして私のところに戻ってきた名簿を確認すると、ひとりAさんの名前に大きく×印がついており、回覧がAさんのところまで回った形跡がありません。
他フロア勤務で、私とは直接面識のない方です。
不思議に思い、Aさんとよく一緒にお喋りしていたはずの方に事情を聞いてみます。
「あの、Aさんの名前が消されているんですが、これは」
「Aさんなんて、いませんよ」
「え?」
「いないんです」
目を見てきっぱりと、これ以上は聞くなというように言い切られました。
すこし尋常でない空気を感じ、それ以上は詮索せずにおきました。
きっと、何らかの事情で辞めてしまわれたのでしょう。
それが言いにくいことなので、あんな形の説明になったのでしょう。
そんな風に思っていました。
ところが懇親会が終わってしばらくして、職場でAさんの姿を見かけました。
見間違いかと思っていたのですが、その後も何度か近くのフロアでお見かけします。
いないはずのひとがいるのです。
心霊現象であればいいなあと思っています。
ですがきっと、そういうわけではないのでしょう。
Aさんは普通に以前も今もここに勤めておられるのでしょう。
であれば、あの「いませんよ」は単なる勘違いであったのでしょう。
そうでなければ、
そうでなかったとしたら、
心霊現象であればよかったのになあと思っています。
本当にそう思っています。
生きた人間はおそろしくてなりません。