朝、建物内でやもりの子に出会いました。
くるっとした眼もちいさな指も大変愛らしく、透けるような薄い皮膚がひどく繊細な印象で、かわいらしいなあきれいだなあとすっかり魅了されました。
人通りのあるすこし危なっかしい場所にいましたので、目立たない場所に移そうと手に取り、そうっと手のひらでくるみます。
慌ててかぷかぷと歯のないちいさな口で私の指を噛む、その様子がまた愛らしく。
適切な場所を探してきょろきょろしていると、清掃員の方に挨拶していただきました。
「おはようございます」
「おはようございます」
視線が私の手元に向いているのを察し、このかわいらしさを独り占めすべきではありませんよね、この幸福な出会いの喜びをほかのひととも共有できるのは嬉しいことですね、と思い、にこにこしながら
「こんなのがいたんです」
と、やもりの子をお見せしました。
悲鳴を上げられました。
悪気はなかったんです。