いいお天気だったので髪を切りました。
これまでは腰の下まで髪が垂れ、床に座れば毛先が地面に着きそうになるくらいの長さであったものを、肩甲骨を覆うくらいの長さまで短くしました。
これまでは髪を下ろせばどこか幽霊じみた風情を漂わせていた自分の影が、いたく標準的でおとなしいものに変わってしまった気がします。
好ましい印象を与えうる若い女性。
自分がそういうものであることを心細く思います。
ものごころついた頃から、なるたけひとを遠ざけようとしてきました。
集団の中の異形としてあるのが手っ取り早くて楽でしたので、そのように振舞ってきました。
愛されたいという望みはありました。
それ以上に他者に触れられることを懼れました。
ひとりでいるのは静かで安全なことでした。
切り落とした髪はつやつやと地に流れ、無害な死骸のようでした。