数年前にひとから聞いた未完成の作品のアイデアとおなじものが、別の場所で別の方の手によってより洗練された形で完成しているのを見ました。 私はそれを――に伝えません。
「心が傷つく、という感覚がよくわかりません。心というのは揺れることはあっても傷がつくものではないでしょう。私はなにに傷つけられたこともありません」「ただ、悲しいだけです」
私はいつだってなにかを真剣に敵視するか、なにかをほんとうに好きになるかしていなければ、ぼんやりと日々を過ごすことしかできなくなってしまうのかもしれません。 必要なのは敵意か愛情。 自分をどこかに駆り立てる衝動。 気のせいでありますように。
自分に関わるものを敵とそうでないものに区分するのをやめるべきなのかもしれません。
自分の意思で殺して殺しきれるような個性なら、もっと楽に生きられたはずだと思うのです。
集団の中で安全に生きていくためには、個性は殺していくべきです。
励まされました。「だからさ、そんな気を遣わなくていいんだって。周りに合わせようとしなくていいって」「はあ、しかし自分なりにやってみて全体とあまりに違うものができてしまってはいささか問題が」「大丈夫、――さんが変わってるのはみんな知ってるから」 私は知りませんでした。
外側から破られ、ひとが通れるくらいの穴を空けられた塀のその穴に、テグスを使って侵入者を絡め取るトラップが仕掛けられているのを見ました。
未成年に間違えられました。
しばらくお仕事を休むことにしました。 休みを取ったらのんびりひきこもるつもりでいたのですが、いざ休みに入ったら動き回ってばかりいます。 私には思いの外、行きたいところがあったことに気付きました。
楽しげなほうに流れる性質です。